ドリフト現象
ドリフト現象とは、スティックに触れていないにもかかわらず、ゲーム内でキャラクターや視点が勝手に動いてしまう現象のことです。
たとえば、操作をしていないのにキャラクターがゆっくり歩き出したり、カーソルがずっと同じ方向に流れていったりするような症状が見られます。
この不具合の主な原因としては、アナログスティック内部の摩耗が挙げられます。スティックの下には接点と呼ばれるセンサー部分があり、これが擦り減ることで、正確な入力を読み取れなくなってしまいます。
また、スティックの根元部分に小さな隙間があるため、そこからホコリやゴミが内部に入り込み、それが誤動作を引き起こすこともあります。さらに、長期間の使用や湿度によって、電気的な接点が劣化・腐食してしまうケースもあり、これもドリフトの原因となります。
実際、アメリカではこのような強度的問題を解決しないままにしているとして、ユーザーが任天堂に対して集団訴訟を起こしたりもしています。
この訴訟は裁判までには発展せず、和解する方向で話が進んでいるようです。
Switch関連の修理で、一番と言ってもいいくらい多くの修理依頼を受ける箇所になるので、一部ユーザーが不満を持って、そのような行動を起こしたもの納得できます。
ドリフト現象問題を解決する次世代の技術
ドリフト現象が起きる原因を、理解するためには、アナログスティックの原理を知っておく必要があります。
詳しくは ↓ の記事を読んでいただきたいのですが、
簡単に説明すると、スティックを前後左右に傾けると、抵抗値が変化し、それによって電圧も変わります。この電圧値を読み取ることで、今どこにスティックが傾いているかをデジタル信号として処理しています。
問題は、前述したとおりスティック内部のセンサーとパーツが接触していることです。
物理的な接触がある以上、使用と共にセンサー又はパーツが摩耗するのは避けられません。
そこで、この問題を解決するための手段として、非接触タイプのアナログスティックが開発されました。
以前書いた記事
【今治市内】アナログスティックの動作不良問題を解決する次世代のスティック
でも、非接触型のアナログスティックを紹介していて、それはホール効果と呼ばれる物理現象を利用したスティックでした。
センサーの摩耗がなくなったものの、強力な磁気を浴びると壊れる危険性がありました。
しかし、その弱点を克服した別のタイプのスティックが開発されていました。
それは、TMRスティックと呼ばれるアナログスティックです。
これも同じく、非接触型ですが、トンネル磁気抵抗の原理を利用したスティックになっています。
トンネル磁気抵抗(Tunnel Magneto Resistance→TMR)とは、磁性体と絶縁体を組み合わせた構造において、電子のトンネル効果によって電気抵抗が磁化の方向によって変化する現象です。
磁性体は、磁気を帯びることのできる物質
絶縁体は、電子(電気)が自由に移動できないような物質です。
わかりやすい例でいうと、磁性体が部屋、絶縁体は部屋と部屋と隔てる壁だと思ってください。
電子のトンネル効果とは、簡単に言うと、部屋から部屋へ電子が壁をすり抜けて移動することができる現象をいいます。
これ以上は量子力学の分野にずっぽりはまっていくことになるので、割愛しますが、この原理を利用して、抵抗値の変化、電圧値の変化を読み取り、スティックの傾きを把握する仕組みとなっています。
とはいえやっぱり…
ホールセンサータイプの弱点をも克服した、TMRスティックですが、やはりスティック根本部分を構成するプラスチックのパーツは接触しているので、結局このプラスチックのパーツが摩耗すると、動きがカタカタしたり、離したときに、真ん中に戻らなかったりして、誤入力の原因になってしまいます。
結局、絶対壊れないわけではない、あくまでもドリフト現象が起こりずらいという認識でいた方がいいと思います。
今回は、ドリフト現象を解決するかもしれない、次世代の技術ということで、ホールセンサータイプのアナログスティックを紹介しました。
通常、当店でジョイコンのスティック交換をさせていただくときは、接触型のパーツを使っていますが、お客様のご希望があれば、今回紹介した非接触型のパーツでの交換修理も承っていますので、興味のある方は是非お問合せください。
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